アイドルは儚いものなので

ご多忙ごきげんOL

菊池風磨というトラップ

 家で少年倶楽部を見ていると司会の河合くん桐山くん、そしてSexy Zone菊池風磨くんが突然テンション高くわちゃわちゃっとすることが多々ある。そんな菊池くんを見て母が「いつもこの子」「またこの子」「この子が喋るとほかの子が見れなくなるから出ない方がいいんじゃない?」と毎度毎度迷惑そうに言う。…すみません母はジャニヲタの娘に話を合わせる為に適当に目についたことを口に出してるだけなので菊池擁護勢のみなさん許してやってください。まぁ、そもそもは私が彼の反抗期を「むかつく!」と言った過去があるから母の潜在意識に菊池くんはむかつく奴だとインプットされてしまったのかもしれない。反省。いや、私は菊池くんが嫌いなわけでは決してないのだ。しかし彼の反抗期を見ているのがつらかった。きっと同じ気持ちだった人も多いかと思う。世間の冷たさや現実の不条理さに納得できなくて自分の無力さに苛立って大人になりきれなくて子供のままでもいられなくて、親に八つ当たりしたり無愛想な態度をとったりしていた時期って誰にでもあるだろう、菊池君の反抗期はまさに典型だった。だから、そんなトンネルを彼より少し早く通ってきた身からすると痛々しくて微笑ましくて思い出したくない過去の過ちを掘り返されているような気持ちになるのだ。それをかわいいわねと大きく包み込んであげられかったのは、私もトンネルを抜けたばかりでまだ修業が足りなかったからなのかもしれない。

 

 そんな彼のイメージをもっとも印象付けるのはJin Akanishiイズム…と言ってはいけないかもしれないが、きっと赤西仁くんのような存在を目指しているんだろうなと視聴者に想像させるソロ曲の全体感、本人の容貌の雰囲気、ワルっぽいキャラクター。現在は落ち着いたお兄さんだが、ほんの少し遡れば前述の反抗期時代に行き当たる為、彼のファンじゃない人には自分勝手で無愛想で仕事に手を抜いているように思われてしまうのも無理はない。私はそんな風に、仕事を仕事と割り切れず与えられた場に甘えている子供っぽいアイドルが、アイドルの中で唯一嫌いである。

しかしどうしてだろう。むかつくけれど、悔しいけれど、どうしてだか菊池風磨は嫌いになれないのだ。どうしても許してしまうのだ。彼にはそんな魅力がある。菊池くんを表現する際によく用いられる言葉であるがまさにその通り、「根はいいやつ」なのだ。私のとてつもなくむかつく気持ちが分かるだろうか。糾弾する材料を手元にそろえて、私はこの人が嫌いだ!と自分の中で断定づけようと決めたのに、なのにどうしてもエンターキーが押せない。本当はいいやつなの…嫌いなんて言えない…マリウスをいじめレベルにイジったあとにさりげなく言う「嘘だよ」の優しいこと、聡くんをバカバカと言うわりに弟のように可愛がって気にしていること、めったに言わないけれど自分とは正反対の相棒を尊敬して愛していること、センターに立つ勝利をちゃんと立ててちゃんと尊敬して守ろうと思っていること…時折見せるツムツムのようなクシャッとした笑顔や、兄貴肌でメンバースタッフに頼られているところ。エンターキーを押す人差し指が動かない。嫌う理由が揃っているのに、それを行使できない。そうして私はいつも結局、菊池風磨を愛でてしまうのである。根はいいやつなんだ。本当はピュアで賢くて義理堅くて不器用でかわいいやつなんだ。なんだかんだ言ってピンチのときには助けてくれるんだ。ザ・ファンシーなマリウスとは違った意味で「愛すべき」キャラクターだと思う。

 

そんな難しい感情を、菊池くんに冒頭のような印象を持つ母にはどうしても理解してもらえなかった。母が菊池くんを悪く言うたびに「う、ううん…そうなんだけどね…」と私は言葉を濁す。母の言葉は正しい。反論の余地はない。菊池くんには嫌われる要素が分かりやすく備わっている。しかし愛される要素はかなり分かりにくく、奥深くに潜ってしまっている。説明しようにもうまく出来ず、母からの菊池排除要請をいつも濁してスルーしていた。なんとか菊池くんのよさをわかってもらいたかったのに、説明出来ないことがもどかしかった。しかし、あるときにふと思いついたたとえが我ながらすごく的を射ているのでここぞとばかりに大文字でドヤ顔をさせてもらう。

 

 

「菊池風磨はジャイアンみたいな存在。むかつくことも多いけど、劇場版があるから嫌いになれない。」

 

 ジャイアンだ。彼の魅力はジャイアンのそれと同じ方式なのである。どうだろう、この言葉でここまで長々と語ってきた菊池くんへの言い表せられない感情を大まかにはカバーできてしまうと思わないだろうか。

私と同じように菊池くんを嫌いになれない理由を他人にも自分自身にも説明できない方は、良けれぜひこの表現を使っていただきたい。そして菊池くんのジャイアンたる面をご存知ない方には早急に「Sexy Zone channel」を見ることを強く勧めたい。きっとあなたも菊池風磨を嫌いになれず悔しい思いをするだろう。私はこの「嫌いになりたいのに…!くそ…嫌いになってやりたいのに…!!ふまたんのバカ!!悔しい大好き!!!」なんていうアホな悔しさが結構好きでオススメしたい。