アイドルは儚いものなので

ご多忙ごきげんOL

ガムシャラ!サマーステーション~25人の夏~

今年も六本木EXシアターにて夏の祭典「ガムシャラ!サマーステーション」が行われている。今年はテレ朝夏イベントの応援サポーターを担うべく結成したMr.King vs Mr.Princeが出演する『特別公演』(ようは普通のコンサート)と我武者羅覇の5つのチームがパフォーマンス対決を行う『VS公演』と大まかに二種類のコンサート体系に分けられている。特に後者の『VS公演』では、ジャニーズJr.の汗と涙の詰まった青春の1ページがファンの眼前で輝いて、一秒も見逃すことのできない少年たちの成長にファンは刹那的な魅力を感じるのだ。彼らには公演が始まる1~2か月前にチームとパフォーマンス内容が発表され、その短い期間で難易度の高いハードなパフォーマンスを極める努力をし、即席で組まれたチームで苦楽を共にし団結力や信頼を築き、そして約一か月間ステージ上でその全てを発揮し勝利を目指すこととなる。アイドルのステージパフォーマンスだけでなくその裏にある努力や苦悩とそれを乗り越えていく成長の経過が好きなアイドルファンの心理をがっつり掴んだイベントである。そして先日、全5チームが総当たりで対決する「予選」公演が終了した。

 

風を切ってゆこう 光輝く場所へーきらめきの彼方へ

ジェシー森田美勇人・増田良・半澤暁・田中樹がショーバスケットに挑戦するチーム我。派手なパフォーマンス故に失敗も目立ってしまう、ハイリスクハイリターンなパフォーマンスに果敢に挑んでいた。直前に増田くんが捻挫をしてしまい、急遽4人での挑戦となったチーム。私はよっぽどそのことを「ガムシャラ!」で悲劇的にドラマティックに放送するのだろうなと予想して感動する気満々でオンエアを見たのだが、実際は違っていた。増田くんからの神妙で涙の光る謝罪なんてなくって、代わりに「パフォーマンスが出来ない分他のところで貢献する」と照明効果をスタッフに相談したり、メンバーのパフォーマンスを舞台袖からまっすぐに見つめ大きな声で声援を飛ばす増田くんの姿があった。増田くんを心配して「5人でチーム我だから…」というメンバーのお涙頂戴インタビューなんてなくって、代わりに直前の変更にも食らいついて「マッスーもいたたまれない気持ちだと思うから、マッスーには『出来るよ』ってところを見せたい」と前向きで本当の意味で仲間を思いやる姿勢を見せてくれていた。このチームに涙なんて似合わない、というナレーションに頷いた。彼らは頑張り方をちゃんと知っていて、陳腐で安っぽい傷の舐め合いなんかじゃなく、横一列に並んで同じ場所目指して全員が全力疾走する信頼を持っているのだと感じた。

 

泣きながら 生まれてきた 僕たちは たぶんピンチに強いー感謝カンゲキ雨嵐

橋玄樹・岸優太・髙橋颯・菅田琳寧・林蓮音がダンスに挑戦するチーム武。昨年、ブレイクダンスに挑んで最下位となってしまい号泣しながら最後の公演を終えることとなったチーム武だが、今年はチームリーダーの岩橋くんの意気込みが始めから違っていた。よほど去年の結果が悔しくて、よほど今年は勝ちたいんだろうなと目に見えて彼の闘志を窺うことができた。元々アクロバットの得意な颯くん・琳寧くん・蓮音くんでも追い付けないところがあるのだから、そうでない岩橋くんと岸くんは特に自分たちの無力さを感じることが多かっただろうと思う。「怖い」という言葉を聞くたびに、彼らの前に立ちふさがる壁の恐ろしさを知った。まだ若く心もとない彼らに無理をさせないでくれとババア心を痛めたりもしていた。しかし、VS公演の幕が開いてそんなババアは度肝を抜かれることとなる。昨年の最下位チームが、ビリ候補と言われたチームが、誰の目にも明らかなほどに完成度の高いアクロバットパフォーマンスを披露したのだから。チーム武の圧倒的なパフォーマンスはすぐにファンの間で話題になり、瞬く間に優勝候補へと名乗りを挙げた。彼らのプライドと努力はその愛らしさとは裏腹に真っ直ぐに優勝を見つめている。

 

信じるのさ 永遠と未来と明日をー青春 

神宮寺勇太・萩谷慧悟・田島将吾・松田元太・羽生田挙武が打楽器パフォーマンスのファンカッションに挑戦するチーム者。身体を大きく動かす他のチームのパフォーマンスに比べて、できない苛立ちに苦しむパフォーマンスだということは昨年から分かっていた。だからこそチームメイト同士の支え合いが必要になる。昨年はリーダーの神宮寺くんがチームを引っ張っていた印象だが、今年は様子が違っていた。仲間に声をかけることを躊躇っていた田島くんが勇気を出して、末っ子の松田くんはチームの感情となり前を向き、曇ってしまいがちな空気を羽生田くんがいつも明るく笑いに変えて、最年長の萩谷くんが技術的にも精神的にも全員の支えになった。昨年すべてを背負った神宮寺くんの背中には、今年はきっちり5分の1の荷物と、そして5倍の本気が乗っていた。彼は敗退の決まった最後の公演で、瞳を潤ませながら「全部ひっくるめて僕たちチーム者の青春でした」と笑った。客席のデシベル判定では全16戦中1敗しかしていないという驚異的な強さを見せてくれた彼らは、全5チームの中で最も美しい汗と涙を流していた。

 

ボクの本気を 見つめてほしいんだーぶつかっちゃうよ

松村北斗森本慎太郎高地優吾中村嶺亜岡本カウアンダブルダッチに挑戦するチーム羅。個性の強いメンバーが集まったこのチームは、他のどのチームよりもぶつかりあって乗り越えた壁が多かったのではないだろうか。特にカウアンの明るい性格が周りを苛立たせることも多かった。「ちゃんとやれよ」と強い語気で怒る姿や、「初めて辞めたいなって思った…」と目を伏せる姿が放送され、ピリッとした空気が画面を通してでも伝わって思わず目を背けたくなった。そんな中で印象的だったのはリーダー北斗くんのチーム作りである。先輩後輩関係をしっかりして部活のようなチームだ、と雑誌で語ったり、通し練習の際は声を荒げて全員に喝を入れたり。クールな彼のそんな表情に驚かさせられつつ、きっと彼は誰よりもメンバーひとりひとりを見て理解しようとしているのではないかと思った。そして幕が開くと、こちらの心配なんてよそに彼らは笑っていた。お揃いのブレスレットを着けて、歌いながら踊りながらパフォーマンスをしながら、他のどのチームよりも楽しそうに顔を見合わせて笑っていたのだ。前半の苦戦、そして後半の追い上げと決勝進出…数々の波乱を振り返って「一番ドラマチックなチーム」と自称する彼らの夏に、私たちはたくさんの感動を見た。

 

信じている ただ信じてる 同じ時間を刻む人へーOne Love 

安井謙太郎・阿部顕嵐・宮近海斗・橋本涼井上瑞稀インラインスケートに挑戦するチーム覇。新設のチームで新しいパフォーマンスへの挑戦だった。彼らに初めから用意されていたのはチーム内年齢差10歳・意思疎通への不安という大きなハンデだった。過剰に気を遣いすぎて仲間がミスしても声すらかけられない様子を見かねた先生の「君らチームなんだぞ」という指摘が彼らの危機感を貫いた。しかしそこからチームとしてのカラーを得るまでがとても速かった。リーダー安井くんを中心に、敬語なし、お互いをニックネームで呼び合うことをルールにした彼らは最強仲良しチームへと変貌する。メンバー同士がお互いを思いやること、優しく助け合うこと。一人が転んだらみんなで駆けつけて手を貸して、一人が喜べばみんなが笑顔になる。前述の指摘をした先生から「このチームは優しくていいね」と言ってもらえた放送を見て胸が熱くなった。さらに彼らはその臨み方を公演中にも遺憾なく発揮する。勝ち負けと同じくらい「みんな楽しかったー?」と客席への反応に拘って、対戦チームを敬って、応援してくれるファンに心から感謝する。最後まで楽しく仲良く笑顔で、ということに心を砕いた彼らの姿勢にはエンターテイナーとして大切なことが詰まっていたように思う。

 

現在、チーム我・チーム武・チーム羅の3チームで決勝公演を行っている。まだ夏は終わっていない。どのチームが優勝するかは分からないが、みんなが全力でみんなが本気で臨んでいるこの熱い夏の戦いを、ファンの側も最後まで全力で見届けたいと思う。そしてすべてが終わったら、お疲れ様でしたと大きな拍手で25人の勇気あるJr.たちの健闘を称えたい。きっとこの夏を超えたとき、一回りも二回りも成長した彼らは私たちファンに「応援ありがとう!」と笑顔を向けてくれることだろう。