アイドルは儚いものなので

ご多忙ごきげんOL

安井謙太郎「僕たちはファンのすべてじゃない」

先日発売された「ポポロ」(麻布台出版社)10月号に、安井謙太郎くんと森田美勇人くんが救命救急ドクターに扮して読者からのSOSに答えるという企画が掲載された。平たく言ってしまえばお医者さんコスでお悩み相談。一般発売前から二人のスクラブ姿はかなり好評で、私も安井先生森田先生が書店に並ぶのを今か今かと待ち望んでいた。

 

そして一般発売が開始し、家に持ち帰る時間も惜しくて立ち読みスタイルで雑誌を開いたとき。私は思わぬ衝撃に胸をグサリと刺されてしまった。

相談者は15歳の女の子。「お母さんに『ガムシャラ!』の録画を消されてしまいました。それだけを楽しみに一週間生きているのに!どうしたらこの悲しみをお母さんに分かってもらえるでしょうか?」という、ジャニヲタなら誰しもが経験したことのある悲痛な「あるある」話。これに対する安井先生の処方は以下の通りである。

ダメダメ!それだけが楽しみだなんて何言ってんの!15歳ならもっと楽しめることがいっぱいあるんだから、そんなに落ち込むな~!そんなに思ってくれるのはうれしいけど、僕たちはゆみみんのエネルギーであって、すべてではないから、できることをもっと探して素敵な女性になってね。俺らもお母さんにとってすごい存在になるね。

痛いくらい胸に突き刺さった。ジャニーズを、それもこの発言をした安井謙太郎さん本人を応援することくらいしか大した趣味を持たない私には、この言葉の刃は一番痛いところに刺さってきた。思わず書店の本棚に向き合ったまま、雑誌を閉じ瞼を閉じ大きな深呼吸をしなくてはならなかった。家だったら膝をついて倒れこんだかもしれないほどの衝撃。負けた。やられた。そう思った。「僕たちはファンのエネルギーであってすべてではないから、僕たちを“楽しみ”のすべてにしないで」。正論の右ストレートが私の頬を容赦なく殴った。もちろんそれがアイドルにとってもファンにとっても理想で、そういう形で応援したり応援されたりできたらいいと常々思っているけれど、実際のところみんながみんなそうはいかない。私生活が上手くいっているときはそういう気持ちにもなれるけど、恋愛も仕事も友情も趣味もうまくいかなかったり興味をもてない時期には彼らの笑顔に逃げてしまいたくもなる。彼らの生きる「ジャニーズ」の世界に逃げて、そこに生きがいを見出せば、現実が面白くなくてもなんとなく生きていける。心の逃げ場になる。それが健全でないということは、誰より自分が分かっているのに。 

安井くんには度々このような現実主義な一面を見てきた。ステージ上では完璧にアイドルをしてくれるけど、雑誌などの受け答えではファンやライターさんが求めている答えをあえて言わないことがある。彼女に「仕事と私どっちが大切なの?」と聞かれたら?という質問に他のJr.が彼女を宥めすかす愛の言葉を選んでいる中、「ジャンルがちげーわ!って言う(笑)」と答えていたときも少し痛かった。恋愛と仕事を同列に並べるなと笑って言えてしまう。今改めて思い返すと人間性が一貫していることに気付く。アイドルと現実を混同する逃避行為の愚かさを、この人は濁さず指摘してくるのだ。

 

何度でも言う。分かってる、そんなことアイドル本人に言われなくたってファンはちゃんと分かってる、分かった上で情けないと思いながらそれでもアンタに逃げてるんだ!しかしこの主張も堂々と胸を張って声高に言えるかと聞かれたら自信がない。開き直って若さと女をドブに捨てている実感もあって、不意にそれが惜しく虚しくなったりもするから。安井くんの警告通り、「アイドルを日常を生きるためのエネルギーとして適量摂取し、私生活とのバランスをとって、アイドルを応援することを含むたくさんの“楽しい”を謳歌する」…そんな人生の健全さを再確認し、それを目指していかなければいけないと思わされた。忘れたくとも心臓に突き刺さって抜けないので、その厳しくも有難いお言葉を(仕方なく)真摯に受け止め改善していく次第です。